
| 工事名 | 赤地地区急傾斜地維持工事 |
| 発注機関 | 福岡県直方県土整備事務所 |
| 施工場所 | 福岡県鞍手郡小竹町大字赤地 |
法面工事において、従来から広く採用されてきたモルタル吹付工は、切土法面の風化防止や表面保護に有効な工法として多くの現場で施工されてきました。一方で、昭和40年代以降に整備された吹付法面は、現在では経年劣化が進行し、ひび割れ、浮き、剥離、背面空洞、浸水による機能低下といった老朽化の課題が顕在化しています。国土交通省関係の技術報告でも、長年供用された吹付モルタル法面について、効率的な補修・補強の必要性が指摘されています。
老朽化したモルタル吹付法面の対策では、従来、既設吹付材を撤去したうえで再施工する更新方法が主流でした。しかしこの方法は、はつり作業に伴う安全リスク、通行規制の長期化、建設副産物の増加、施工コストの増大といった課題を抱えています。そのため近年は、既設吹付材を可能な限り活かしながら、補修・補強によって性能回復を図る考え方が重視されています。実際に国交省地方整備局の報告でも、既設モルタルの撤去を前提としない補修・補強技術が、工期短縮や廃材低減に有効と整理されています。
こうした背景の中で注目されるのが、簡易法枠吹付工の考え方です。簡易法枠吹付工は、吹付モルタルによる法枠を形成し、必要に応じて枠内に植生基材吹付や補助的な安定対策を組み合わせる工法として整理されており、モルタル・コンクリート吹付工と比較して、表面保護に加えて枠構造による変状抑制、景観配慮、現場条件への柔軟な対応が期待できます。中国地方整備局の技術資料でも、簡易吹付のり枠工法はモルタル・コンクリート吹付工と並べて比較されており、法面条件に応じた選択肢の一つとして位置づけられています。
簡易法枠吹付工の意義は、単なる表面被覆ではなく、法面の変状を面的かつ構造的に抑える点にあります。特に、老朽化したモルタル吹付法面では、表層の防護機能だけでなく、背面地山との密着性低下や局所的な不安定化が問題となることがあります。このような場面では、全面撤去・全面更新だけに頼るのではなく、現地調査を踏まえて、増厚吹付、空隙充填、補強鉄筋、地山補強、排水対策などを組み合わせる判断が重要です。簡易法枠吹付工は、その中で合理的な補修・補強メニューの一つとして評価できます。
また、今後の将来性という観点から見ても、モルタル吹付の老朽化対策はますます重要になります。過去に整備された吹付法面ストックの高齢化が進む中で、すべてを撤去更新するのは、予算・安全・環境負荷の面から現実的でないケースも少なくありません。そのため今後は、既設ストックを診断し、必要な範囲を的確に補修・補強する維持管理型の法面対策が一層求められます。こうした流れの中で、簡易法枠吹付工は、施工性・経済性・機能性のバランスを取りやすい工法として、現場での活用余地が大きいと考えられます。これは公的報告で示されている補修補強技術の方向性を踏まえた実務的な評価です。
株式会社ナルテックでは、法面の状態を的確に見極めたうえで、モルタル吹付法面の老朽化対策と、現場条件に応じた簡易法枠吹付工の活用を通じて、防災・減災に資する施工を追求してまいります。法面工事は、ただ補修するだけでなく、将来の維持管理まで見据えて最適解を選ぶ時代に入っています。老朽化した法面に対し、合理性と耐久性を両立させる技術提案こそ、これからの法面施工会社に求められる価値だと考えています。